2023年4月17日月曜日

TYOVサンプルキャラクターの最終回

  『サウザンドイヤー・オールド・ヴァンパイア』でサンプルとして作成したキャラクター、八五(はちご)は、諏訪与一頼忠(すわのよいちよりただ)として生涯を終えました。

36回目、【啓示】77番の1つ目[36/77/1]が最後の〈体験〉です。

前回から、もう少し生きながらえるかな? と思ったのですが、ダイスの出目で一気に【啓示】番号が進み、ゲーム終了の指示が下されました。



“与一”にまつわる過去の記憶を取り戻した頃、与一は平泉で飯沼助宗に再会します。

彼と遭うのは鎌倉時代末期以来です。
思えば、与一が強大な不死者“得子様”と誰かの間に生まれた子だという情報をもたらしたのは助宗でした。そして彼もまた得子の子で、ふたりは「得子の香袋」を奪ったり、奪い返したりしたのです。

かつて京の人々を賑わせた美丈夫の検非違使は、今や修験者姿で、疲れ果てた目をしていました。

ふたりの不死者は重ねてきた罪業と、この世への未練のなさを語り合います。

助宗の見立てでは「得子の香袋」の中身は反魂香ではないか? とのこと。しかし一度死んだ、魂なき異形である与一と助宗に反魂は無意味です。助宗は少しばかり香を焚いたことがあるそうですが、何も起きなかったとか。では、誰か黄泉帰らせたい者はいないか? 脇屋義助のように復活するかもしれない、と考えても、与一には、そして助宗にも、そうしたい人は最早ないのでした。

いろいろ話した結果、ふたりは陸奥山中に隠棲することを決めます。が、あらかじめやっておきたいことがありました。
「得子の香袋」をできる限り集めて、すべて焚いてこの世からなくすことです。

後生大事に持ち続けた者にとってまったく役に立たたない香。それは得子という大妖怪の悪意の顕れに思えました。
ふたりは「得子は褒姒(ほうじ)ならん――人が相争い、苦しむを見て童女がごとく笑う」と言い交わします。与一と助宗は香袋の香を焚くための香炉を用意しました。

そして集めた香を――自分たちの物を含めて香袋4つしか見つかりませんでしたが――富士山麓で焚くことにします。

時に宝永4年(西暦1707年)――富士の宝永大噴火が起きます。

その後、ふたりは幕末まで陸奥山中に隠れ忍んで生きていたようです。
人を餌食にするのをやめ、互いの精を吸って長らえました。与一も助宗もゆるゆると衰えていき、奥州どころか日本中が佐幕か倒幕かで揺れ動く頃、ふたり同時に塵となって儚く消えたのでした。



以上で『サウザンドイヤー・オールド・ヴァンパイア』サンプルキャラクターのプレイは終了です。

この吸血鬼、八五(与一)の“不死の生”は鎌倉時代に始まり、江戸末期で終わりましたが、実質的な活動期間は文治2年(西暦1186年)~宝永4年(西暦1707年)の521年間になるでしょう。
助宗とともに消滅するまでならプラス150年ほどでしょうか。

僕のプレイがけっこう要所要所で足踏みする(年表上の事件や人物を取り入れたがる)ため、タイトルどおりの1000年には届いていませんが、それはそれでOK。
ありえない長さを生きる、“かつては人だった”怪物の物語を充分に楽しめました。

日本語版が出る前に僕はこのゲームを何度かプレイしているのですが、【啓示】の内容とソート(並び順)――特に基本の1~80番――は本当によくできていると今回も感じました。
どの【啓示】が下されるのかはダイスによるランダムなのですが、意外でありつつ、物語の整合性が取りやすい形にデザインされていると思います。

狙ったように〈記憶〉が消え、〈日記〉も失い、それが最後の最後に、プレイヤーの僕も漠然としか気づいていなかった、八五にとって最も重要な〈記憶〉が蘇った時には震えました。

このプレイではネットで検索したりして、ある程度、史実を反映しています。
そのためもあって八五はあまり強力な……たとえば攻めてきた織田の軍勢を一掃してしまうような超常の力を振るいませんでした。広大な範囲を崩壊させたり、完全支配したりするような【啓示】が出なかったことも要因ですね。
どのくらい吸血鬼は強大なのか? についてはプレイヤーの好みの範疇だと思います。ルールに従ってさえいれば、もっともっとパワフルに活躍させてよいでしょう。架空のファンタジー、SF世界を舞台にプレイしたら、そのあたりの自由度はいっそう上がりそうです。

――吸血鬼、八五(与一)の最期は寂しいものでした。
異形に成り果て、翻弄されるまま流されて終わる人生でしたが、終わりに際して人を食らうことをやめ、腹違いの兄弟と争うことなく餌にし合って消えたのは、自分を生んだ邪悪な何かに対する、せめてもの抵抗だったのかもしれません。


0 件のコメント:

コメントを投稿

『サウザンドイヤー・オールド・ヴァンパイア』キャラクターシート拡張版

先日までプレイしていたサンプルを踏まえ、Googleスプレッドの『 サウザンドイヤー・オールド・ヴァンパイア 』キャラクターシートを拡張しました。 基本構成は変わりませんが、できるだけ行挿入で新たな欄を作らなくても済むように、各項目の記入欄を増やしています。 また暫定的なものです...