2019年2月3日日曜日

エンター・ジ・アヴェンジャー日本語版

グループSNEの友野詳先生がツイッターで「2月2日は飛鳥五郎が殺害された日」と呟いておられるのを拝見して思い出しました。
そういえば以前、大切な人を殺されて、復讐を誓うキャラクターが主人公のゲームを和訳したな、と。

こちらの『エンター・ジ・アヴェンジャー』は復讐者と、その復讐の顛末を描くミニRPG、ストーリーテリングゲームです。作者はイタリア人デザイナーのRafu (Raffaele Manzo)氏で、ファンタジー短編とストーリーゲームの専門電子雑誌『World Without Master』に掲載されました。
WWM誌には毎号、このようなミニゲームが付いていますが、これはイラストも含めてクリエイティブ・コモンズ・ライセンスBY-SAでシェア可能ですので、アップしたいと思います。

エンター・ジ・アヴェンジャー
作者:Rafu (Raffaele Manzo)
イラスト:Tazio Bettin
出典:World Without Master Issue 1(Dig a Thousand Holes Publishing)
https://www.worldswithoutmaster.com/bazaar/worlds-without-master-issue-1



『エンター・ジ・アヴェンジャー』はプレイ人数3人以上、5人が最適のゲームです。
各プレイヤーは「復讐者」「語り手」「被疑者」「審判」「天罰」、5つの役割のいずれかを担当することになります。遊ぶにはメモする紙、筆記用具に加えて、トランプのエースカード4枚とジョーカー2枚の計6枚が必要です。トランプは代わりにインデックスカード等を用いて、ルールに合わせた構成の6枚を自作してもいいでしょう。

復讐者の地獄巡りというテーマはマカロニ西部劇で頻出するのですが、イタリア人好みの題材なのかもしれません。
復讐、その受難、クライマックスの悲劇……。昔、作曲家の三枝成彰氏がイタリアのオペラ関係者に『忠臣藏』の話をしたそうで、その話は結局何人死ぬ? と聞かれて「47人、全員死ぬ」と答えたところ、それはヒット確実だ! と断言されたとTV番組で話していました。三大自転車ロードレースの1つでイタリア開催のジロ・デ・イタリアのコース設定が異様に過酷なのは、過剰に劇的であることを好むイタリアの国民性ゆえだ、という記事を読んだこともあります。

まあ、日本人も受難とかはさておき(これはおそらくキリスト受難が背景にある)、三大仇討なんてあるくらいですから、復讐譚はウケるテーマだと思います。『快傑ズバット』など放映当時は毎週、オープニングで親友の飛鳥五郎が殺害される姿を全国の子供たちに見せつけていたのですから、「過剰に劇的」を好むのもイタリア人に限った話ではなさそうです(笑)。

このゲームのジャンルは、いちおうファンタジーで、それに即した例示がなされています。
とはいえシステム面では、ファンタジーでなければ成立しないというものではありません。日本人の僕らとしては「復讐者」を荒木又右衛門にした『鍵屋の辻RPG』、早川健にした『快傑ズバットRPG』として遊んでもよいのではないでしょうか。

2019年1月2日水曜日

TIHシナリオ:戦火に引き裂かれた地で

『ジ・インディ・ハック(TIH)』は、プレイヤーが主導する局面の多い、即興性の強いRPGです。
実際のプレイでは、他のオールドスクールなファンタジーRPG(D&DとかT&Tとか)のシナリオを流用することが第1のオススメ手段なのですが、オリジナルのシナリオを作る場合は、どのようなものになるのか? その例を挙げたいと思います。

マックス・ヴァンダーヘイデン氏のシナリオ『戦火に引き裂かれた地で』は、即興で追加される「細部」が物語を左右する(さらには背景世界も生み出していく)、TIHエンジンの要諦を踏まえたものです。これを和訳し、氏から許諾を得ましたので公開します。

原典『The War Torn Lands』初出:
http://www.shoalmont.com/2018/09/shoalmont-018-war-torn-lands.html
ヴァンダーヘイデン氏の現在のブログ Shoalmont Games:
https://shoalmontgames.wordpress.com/

Thank you, Max Vanderheyden!


和訳PDFは以下の画像をクリックしてダウンロードしてください。

 War_Torn_Lands_JP


分量はたった1ページ、しかも下半分はキャラクターシートです。
これはTIHのシステムをご存知の方でも驚かれるかもしれません。

しかし、これでセッション可能なのです。プレイヤーが追加する「細部」しだいで、いかようにも話や設定が変化するTIHでは、ゲームマスターが事前にきっちりとしたボリュームのあるシナリオを作ったところで、その内容の半分もプレイで使えたら、よいほうとなります。ならば最初からプレイヤーに「やりたい/やれそうなネタ」を出してもらって、それに合わせて即興で進めればいい……。そんな考え方を極端に表しているのが、このシナリオです。

『戦火に…』は通常のシナリオのようにGMだけが所持し、閲覧・使用するものではありません。キャラクターシートと一体化していることでもわかるように、これは各プレイヤーにも1枚ずつ配布します。
セッションに導入する際の流れは、おおよそ以下のようになります。

1.『戦火に…』を各人に1枚ずつ配る。
配布後、プレイヤーに目を通してもらいながら、GMは「大きな戦争があった後」が舞台になることを伝えます。

2.プレイヤーキャラクターを作成(流用)する。
プレイヤーは通常どおりにキャラクター作成します。
すでに使用しているキャラクターを使うことにしてもかまいません。

3.「生業ごとの質問」に答える。
各プレイヤーは、新規キャラの場合は作成時に指定される他の「質問」に追加または交換する形で、使用済キャラの場合は追加する形で「生業ごとの質問」に答えて、他の人たちに伝えます。
答えの内容はメモしておくとよいでしょう。

4.「出会うものについての質問」に答える。
上と同様に各プレイヤーが答えます。先の答えを踏まえて考え、回答するとよいでしょう。こちらの内容もメモしておきます。

5.「ゲームマスター用の質問」に答える。
ゲームマスターは2つの「質問」に答えます。これは「3.」と「4.」で提出されたプレイヤーたちの答えを考慮して回答を決めます。
2つのうち「あなたたち(※これはプレイヤーキャラクターたちと考えていいでしょう)を進ませる、または留めさせるものは何か?」については、その答えをプレイヤーたちに伝えるのがよいと思います。
もう1つの「あなた(※つまりGM)が何よりも重視する真実とは何か?」の答えは、それがふさわしいと思うなら、GMは秘密にしてかまいません。公正を期すのであれば、その内容をメモして、プレイヤーたちには公開してもよい時が来るまで隠しておきます。

6.最初の場面を設定する。
GMは、これまでの「質問」への回答すべてを検討して、冒険の最初の場面を語ります。
以降はTIHのルールに則り、プレイを進めます。

最初の場面作りはもちろん、セッションが終わるまでの間、GMは困ったらプレイヤーたちと、いくらでも相談してかまいません。何しろ、このシナリオには事前に決まっていることは、ほとんど何もないのですから!
プレイヤーも相談や「細部」の追加で、積極的にお話の展開に協力してください。

ざっくりとですが、以上のようになります。
GMはとりあえず、プレイヤーキャラクターたちの目的を提示するために「出会うものについての質問」の回答に着目すると、冒険を立ち上げやすくなります。
「求める標的はどこにいるのか?」や「任せられた厄介な仕事は何か?」の答えは、うまくすれば、ほぼそのまま冒険の目的にできます。即興でセッションを行うことに不安がある場合は、この2つのどちらか(あるいは、あなたの使いやすそうな質問)は、必ず誰かが答えるように、とプレイヤーたちに求めるのがよいと思います。またはGM自身が追加で答えてしまってもよいでしょう。

私が試してみたいと思うのは、プレイヤーにも全公開のシナリオであることを活かして「参加者全員がプレイヤーとしてキャラを作り、GM役は場面ごとにローテーションする」やり方です。TIHは非常に軽いシステムですから、ルールを把握している人が1人いれば、その人の説明とサポートで、ルールブックを熟読していない人でもGMすることが可能なはず……。

できれば近いうちに、挑戦してみたいと思います。

『サウザンドイヤー・オールド・ヴァンパイア』キャラクターシート拡張版

先日までプレイしていたサンプルを踏まえ、Googleスプレッドの『 サウザンドイヤー・オールド・ヴァンパイア 』キャラクターシートを拡張しました。 基本構成は変わりませんが、できるだけ行挿入で新たな欄を作らなくても済むように、各項目の記入欄を増やしています。 また暫定的なものです...